
何かとこだわるNRSだが、その中でもスポークはかなりこだわっているかもしれない。
ホイールの一構成パーツであるスポークは、適切なスポークパターンと、強度と重量、さらに
空気抵抗の少ない形状が重要だ。
ご存知、スイスDTスポークをスペシャルオーダーのホイールに使用していた。
国産と比較して、なんせ折れないし飛ばない(スポークの首が折れる事を゛飛ぶ゛と言う)。
欠点は使いたいモデルとスポーク長が、なかなかそろわないのと値が高いぐらい。
エアロスポークなど、取り扱い長が少なくて入手不可のため、現実それを使用してホイルビルドを
する事は、出来なかった。
そこで、
DTRevolutionの1.8-1.5-1.8を使用して軽量で高剛性なホイールを
造ってきた。
NRSが
サピムスポークを知ったのは、クワハラバイクワークスからの
ファックスだった。2002年あたりだったと記憶している。
新商品の取り扱い案内のファックスにサピムスポークが記載されていた。
しかしそのファックスでは、単なる丈夫なスポークとだけ紹介されているだけだった。
エアロスポークもクワハラからのファックスには、なかった。
その時NRSは、DTからサピムスポークへ変更する気にはなれなかった。
昨年12月に゛SUPERZIPP゛をデザインするにあたり、エアロスポークの
使用は大前提だった。
当初、
を使用する予定だった。aeroliteは、
で、この様な
2.0/2.3×0.9/2.0の形状をしている。
DTスポークの材質は全て、ドイツ工業基準DIN-79100のステンレス。
aeroliteは、初めての使用になるが、過去の経験で、軽量であっても強度的に不安は感じなかった。
国内の代理店で、"SUPERZIPP゛で必要になるaerolightの手配をしたが、取り扱スポーク長の
レンジがせまく "SUPERZIPP゛に使用できない。
そこで、インターネットワーキングを使って、適切な長さのaeroightを入手すべく探しまくった。
一晩賭けて、アメリカのサイトでaerolightをo単位で販売してくれるところを見つけた。
しかしこの値が高い、尋常でなく高いのだ。
1本あたりの単価が、¥380円を超えている。ヨーロッパでも、同じか高いところもあった。
日本の代理店の価格をお伝えする事は、出来ないが欧米で買うよりも日本で買う方が、
DTスポークは安い。
これらの理由から考えられるのは、現在のDTスポークの生産地は、アジアにある可能性が
考えられたが、この時点では想像の域を超えなかった。
スポークの入手に困り果てた自分は、99年のワールドカップオセアニアラウンドで知り合った
ドイツ人のメカニック Martin にEメールで相談してみた。
何とか、゛SUPERZIPP゛に使用する長さのDT aeroliteを入手できないかと。
その日のうちに、MartinからEメールのレスが入ってきた。
Martin:「DTよりいいスポークがあるよ。値段は少し高いけれどね。でも最高だよ。」
そうタイプしてあって、紹介されたのが
CX-Ray
こんな形状で、材質はINOX 18/8。食器(フォーク、スプーン)やシンクに使われている18-8ステンレスである。
14番(2mm)のスポークを冷間圧延で0.9×2.3(2.25o)ミリという形状にしている。

右の図は、テキサス大学のLSWT(ロースピードウインドトンネル)
での、スポークの形状ごとに発生する空気抵抗の
一つであるタービュランス(乱気流)のシュミレーションだ。
タービュランス(渦)の発生している幅が小さく短いほど
空気抵抗は、少なくなる。
下から、ノーマルスポーク、マビックと思われしスポーク、
ブレードスポークとなっているが、フラット(扁平)スポークと
言った方が解りやすいと思う。
そして、従来の楕円形状のエアロスポークで、
一番上にあるのがCX-Rayだ。
手っ取り早く空気抵抗を説明すると、前面投影面積が
空気抵抗の最大のファクター。
前面投影面積とは、物体正面から光を当てると
発生する影のこと。
影が大きい(面積が大きい)と物体にぶつかる空気が
増えるので単純に空気抵抗も増える。
その次が、空気の流れだ。
いかなる物体も、空気抵抗を発生させる。
物体にぶつかった空気の分子は、掻き乱される。
空気抵抗を減らす行為とは、いかに空気の分子を掻き乱さず、
掻き乱した分子を沈静化させることを言う。
沈静化とは、整流のことである。
フラットスポークは幅が3ミリ以上あり、線にしか見えない控えめなスポークを面で見せ
抜群のアイキャッチを示す。1mm×3mmと言う形状のフラットスポークは、見た目も触った感触も
ノーマルスポークと比較して、風を切るので空気抵抗が少ないと思わせる。
しかしフラットスポークは、空気にぶつかる前面投影面積こそ少ないが、CD値と呼ばれる
空気抵抗係数が大きいのだ。
図のシュミレーションでフラットスポークを抑えて、空気抵抗の少ないオーバル(楕円)スポークは、
CD値が小さい。すなわち滑らかに空気をすり抜けることができる。
スポークの形状を加工するのに、フラットとオーバル形状でどちらが難しいかと言うとオーバルになる。
フラットスポークは、文字通り平らにするだけだが、オーバルスポークは楕円と言う曲線に
加工しなければならないから。
これを可能にしたのが、CX-Rayに使われている18/8ステンレスだ。
18/8ステンレスと言うのは非常に耐腐食性が強い事で知られる。
だが意外に思われるかもしれないが、物性は柔らかい。
それゆえ複雑な形状にプレス(鍛造)加工しやすい。そのため、台所のシンクや食器類に使用されている。
食器やシンクのような複雑な曲線加工が出来るのだから、スポークの曲線(オーバル)加工など
簡単なものとなる。
しかし、そんな柔らかい材質でなぜCX-Rayは、最強と呼ばれているのか。
それは、冷間圧延でのエアロ形状加工により材料物性が変化しているためなのだ。
CX-Rayの引っ張り強度は、ハブに引っ掛ける部分がストレートタイプが290kg。
一般的なハブに引っ掛ける部分が曲がっているタイプでも、270kg。
国産スポーク最強の星スターブライトの引っ張り強度の数値はわからないが
昔組んだエキストリームトレッキング用MTBのホイールテンションが150kgあたりだったが
ワンシーズン持つことなく、スポークが破断していた。
蛇足だが、その頃使っていたMTBはノンサスのリジットで、ビックフォークと呼ばれる壊れない事が目的の
ブットイパイプのフロントフォークだった。
スポークのテンションが100kg程度だと、エキストリームトレッキングでは、一山降るまでにホイールが
走行不可の状態まで振れてしまって使い物にならなかったため、高テンションで組む必要があったのだ。
