ロードレーサー 危険な乗り物

貴方は、ロードレーサーというモノを説明しなさいといわれると、どう答えますか?

私は「ロードレーサーは危険な乗り物」と答えます。トライアスロンバイクも同じです。

ヘルメットやグローブがファッションや記録向上のためでなく、生体保護のために

レギュレーションにより着用が規定されている種目に使われる機材。

それが、ロードレーサーなのです。

トライアスロンバイクとは、UCIレギュレーション準拠のTTバイクなのです。

私は(財)日本体育協会公認上級コーチとして、自転車競技以外の競技スポーツの現場指導に

あたられている方や、研究者の方と席を隣にしたり、数泊寝食を共にする機会を可能な限り

多く設けるようにしています。

他種目の競技スポーツの最前線の方々と話をするたびに、自転車競技の特異性を

痛感します。

例えば、陸上競技で有名な実業団チームの監督さんやコーチと、話をしたとき。

話と言うより、喧嘩を売られたといういう感じでしたが。

上級コーチ全種目共通課程で大阪体育大学の体力測定センターの所長さんで教授を

されている方のレクチャーで、受講生の私にマイクを渡され、話した内容が陸連関係者には、

気に入らなかったようです。

マイクを渡されたのは、トレーニング科学の時間だったと記憶しています。

「今日、受講されている方の中でトレーニングに心拍数を取り入れておられる種目の方・・・

っエット・・・自転車の方、おられますよね・・・」と私にマイクが廻ってきました。

自転車は、日常的に心拍数を使ったトレーニングを取り入れています。

マイクを渡された私は、こう喋りました。

「現在は、心拍数だけではありません。タイミングセンサーをホイルとクランクに取り付けて、

それらを心拍数と共に、小型のコンピューターにメモリーして、レースやトレーニング終了後、

PCにダウンロードして、時間軸に則ってグラフとし、数値的、視覚的にデータに置き換えて

パフォーマンス向上に使っています。

現在は、さらに軸トルクやチェーンのテンション計測により、実際の走行中の出力も

利用しています。」

また、私にマイクを渡した教授が私に、こう聞きました。

「アテネオリンピックで自転車は、銀メダルを獲りましたが、それに関して如何お考えか?」と。

私の返答は、「夏のオリンピックで最も観客の集まる自転車競技でメダルを獲得した事は、

先進国からの評価が高かったのは事実です。

かけっこや、重たいものを遠くに投げてメダルを獲っても、お金が無くて、頭もわるいから

地べたを二本足で走ることや、重たいものを遠くに投げる事でしか、メダルを獲る事が

出来ないと言うのが、現実の世界の評価です。(このコメントが、陸連の気に入らなかったらしい)

しかし銀メダルを獲ったのは、ロードレースではなく、トラックレースです。

世界における自転車競技とは、99%ロードレースの事を意味します。

メダルを獲得したトラック種目は、僅か1%しか競技人口のいないマイナー種目です。

ましてや、金メダルに輝いたドイツナショナルとの決戦前夜、オリンピック報奨金が

いくら、銀メダル確定でいくらと、戦う前に勝負を諦めて緊張感を放出していた

JPNの選手の評価は、ナショナルヘッドコーチは、酷評しています」と。

近代ロードレースは、心拍数、速度、出力をPCで管理しながら、高出力無線機を使った

ネットワークを利用した、戦術が必須になっています。

ロードレーサーは、ヒューマンパワードビークルとして見ると、その機械効率や運動性能は、

UCIによる空力規制や最低重量規定(2005年は、6.8キロ)があるにもかかわらず、

この地球上でもっとも優れていると言えます。

「リベカントの方が云々」と言いたい方は、日本自転車競技連盟が発行している

レギュレーションブックを購入して熟読してください。

それは、UCI(国際自転車競技連合、スイスジュネーブ)のレギュレーションを元に

作成されています。

リベカントを否定しているのではありません。だた、走る、曲がる、止まると言う運動性能では

リベカントの巡航速度の高さに特化した設計は、ロードレーサーと比較する土俵が

違うと言う事です。

NRSハシモトは、“安全に”走る、“安全に”曲がる、“安全に”止まる”を最重要項目として、

危険なロードレーサーというモノに接するように心がけています。



画像は、1998の美山ロードの雨のダウンヒルで、クラッシュの要因となった某社のADX240CFと言う
240グラムのカーボンリムです。
このホイルは、私がホビーレーサーの友人に頼まれて、組んだものを金を払って譲ってもらったものです。

翌週の広島県森林コースで開催される、西日本実業団に勝負をかけて最後の調整のために、
出場した美山ロード。
前半いい感じで乗れたので、翌週のレースのためにその周回で降りるつもりでした。
その周回のウエットの下りで、学連の集団に追いついてしまいました。
集団とやや距離を取り、パッシングのタイミングを見計らっていると案の定、勝手に集団内でハスって
落車が発生しました。
集団は、左コーナーイン側に位置していました。私は、アウトサイド後方。
落車の発生した集団から、一人二人とアウト側に流れてきました。
二人目を交わした後、3人目を交わすために後輪に荷重をかけるコーナーリングテクニックの
リアステアライドを使った時、ホイールが崩壊しました。

リアステアライドといっても、自転車競技の選手はピンとこないと思いますが、あるレベルの選手は、
意識的、無意識的にこれを使っています。
このテクニックは、Cornerring Force の概念を知っていれば、理解できます。

この状況が発生したコンマ数秒の私の行動は、いまだに明確に記憶しています。
3人目を交わしきった瞬間、バイクのリアが下がりました。
何が起こったのか理解するより早く、ビンディングをリリースしてバイクを放棄しました。
ベクトルは、既に左に変わっていたので腹ばいになって雨の路面を30メートル以上滑りました。
グローブをつけた両手を「止まれ〜!!」と心の中で叫びながら、路面に押し付けました。
私の走行ラインをトレースしていたチームメイトは、私が放棄したバイクに乗り上げてガードレールに激突。
停止した、私が取った行動は、チームメイトの救助でした。
手を差し出すと血が「ピュ〜」っと吹きだしいて、あせりました。
でもそれは、チームメイトではなく、抱き起こそうとして差し出した私の左手からでした。
後続の安全を確保が確認できたので、右手で圧迫止血を試みましたが、血圧が上がっていたせいで
中々止まりませんでした。
結局、サグワゴンの京都車連の方が、ミッキーマウスのバンダナで、止血してくれました。
ミッキーマウス、血まみれです。
それを見て、苦笑しつつチームメイトと一緒に病院直行に。

当直の医者が、擦過傷を負った脚にいきなりガーゼを当てるので「ソフラチュールを
使ってくださいよ!」と言うと「医療関係者ですか?」と聞かれたので
「赤十字の救急救命員です」と返答しました。
結局、擦過傷とアバラにヒビで翌週のレースは、肋骨の悲鳴に耐え切れずレース前半、先頭集団で
ホーム通過時点でリタイアしました。
チームメイトは、骨盤の圧迫骨折だったそうです。

ポラールのクロストレーナーのデータをPCにダウンロードしたデータをグラフで見ました。
時速72キロで心拍、速度、ケイデンスのデータがとんでいました。
リアホイールが崩壊して、バイクを放棄した時の速度です。

リムメーカーにEメールで状況と画像を送りました。
担当者は、驚愕したようです。
「このような状態になるとは・・・」と。
あと「この状況でアバラにヒビで済んだ、テクニックが凄い」と喜んで良いやらと複雑な気持ちになる
返答でした。

このホイールは、私の当時の体重で時速60キロを超えると、やばいことは解っていました。
バイクのセットアップで、いつもの六甲山ヒルクライムと、最高速テストをやるダウンヒルで感じていたのです。
ちなみに、その区間はプロスタッフ400gの32Hでギアが52×14で最高速が時速86キロ。

広島のコースは、前年のデータで時速60キロ以上出ない事が解っていました。
しかし、美山ロードの学連の落車は、想定外でした。
画像を良く見ると、捩れるように曲がったスポークで、μの低い雨のダウンヒルの後輪に
どれだけ荷重が発生していたか、解ると思います。
ウエットのダウンヒルコーナーのリアホイールに、これだけの荷重を発生させる事が出来るのが、
リアステアライドです。