巡航速度が良いと言うホイールの都市伝説編
巡航速度の高いホイールを好むのは、トライアスリートに多い。
トライアスリートにとってメジャーなのはハワイアイアンマン。
そこで使用されるバイクは、トライアスリートにとってデファクトスタンダードとして
ホビートライアスリートにインプリンティングされている。
もう一方のデファクトスタンダードである、オリンピックディスタンスで競うワールドカップも
ホビートライアスリートに多大な影響を与えている。
この二つのレースのバイクセクションは、真逆と言っていいほど、違いがある。
単に距離が違うだけではない。
ハワイアイアンマンでは、コナウインドに吹かれながら延々と果てしなく続く絶望的なストレートが
コースの大半を占める。高低差もあるのだが、なんせ電柱1本無い同じ景色が延々と続くのと、
勾配が上り始めても、緩やかなために気がつくと勾配だったいうもの。
加減速こそ少ないが、意外と登りがあるコースなのだ。
必要とされるホイールは、緩やかなアップダウンの続くストレートコースの180キロの
バイクセクションにあわせたものが求められる。
前後ディスクホイールと言うのが、正解なのだがハワイ特有のコナウインドという横風で、
バイクのステアリングが取られるために、使用が禁止されている。
そこで、リムハイト55ミリ前後のディープリムを多くの選手がチョイスしている。
55ミリハイトのディープリムは、リム重量が400グラム前後と重いために、慣性モーメントに
強く影響されるが、速度変化が少ないために、一旦巡航速度に達するとそれを維持するだけで
良いので、リム重量が400グラム前後であれば、あまり影響は無いと言える。
リムハイトが55ミリもあるとスポーク数も減らす事が可能なので、55ミリのリムハイトと相まって
更なる空力的に有利なホイールを組む事ができる。
ただし、重量400グラム前後でリムハイト55ミリ前後のリムは、強度的に物凄くもろい。
そのため、スポークテンションをあまり上げる事が出来ないために、レスポンスの悪いホイールと
なってしまう。スピードの加減速の少ないコースでのみ真かを発揮するホイールである。
一方、オリンピックディスタンスのバイクセッションは、40キロと短い。
また、コースも市街地を利用する事も多く、コーナーやパイロンターンや高架越えの登などで、
加減速がロードレースと変わらないレベルで発生している。
ロードレースとの違いは、アタックやゴールスプリントがないというぐらいだ。
2006年のワールドカップトライアスロン石垣のバイクセクションを見ていると、トライアスリートの
走る様は、ロードレースと何ら変わりない。
コーナーへの進入速度が遅いのと、集団の密集度がロードレースと比べて少ないという違いは、
あるが、皆コーナーの立ち上がりでは、ダンシングをして加速をし、高架越えの登りで速度を
維持したり、集団についていくためにダンシングをしていた。
ダンシングしない選手も、速度を落とさないためにシッティングでペダルを踏み込んでいる様が
見て取れた。
使用しているホイールは、44ミリハイトが主流で"StreetFighter"で使用している
ADX-1(アルミロープロファイルリム)も見て取れた。
宮古島のバイクセクションの展開であれば、 "SUPERZIPP" なら抜群のパフォーマンスを
発揮しただろう。
前置きが長くなってすまない。
巡航速度が良いという言い方をするトライアスロンショップや選手が何を持ってそう言っているのかが
都市伝説 であることが多いのだ。
今や主流となっているトライアスロンは、オリンピックディスタンスに代表されるもの。
ハワイのような、アイアンマンディスタンスは、マイナーに属する。
しかしだ。トライアスロンにかかわる者にとって、ハワイアイアンマンは、崇高なる絶対的な地位で
それに伴い、無意識的にトライアスロンバイクを考える時に多大なる影響をもたらしている。
そのためバイクギャラリーで紹介しているこのバイクの様なただひたすら直線を巡航速度で、
駆け抜けるハワイアイアンマンに特化したバイクのコンセプトに何かしら影響されている。
このこのバイクは、ホイールにコリマの4バトン26inを使用しているが、これはハワイの
コナウインドという横風対策のために、使用している。
このコリマの4バトンは、剛性が高い。このバイクのように剛性の無いフレームでは
とても相性が良い。だだし、思いのほか空気抵抗や転がり抵抗が大きい。
今日日のカチカチアルミや高剛性のカーボンフレームに使用するとかなり脚に堪える。
剛性が高くて、慣性モーメントも大きいので巡航速度を維持するホイールと言えるが、
27インチのコリマ4バトンの方がこのテストの結果が正しいとすれば、より巡航速度を維持しやすい
ホイールと言えるが、やはり空気抵抗がネックな部分ではある。
そこで、
ZIPP404のような55ミリリムハイトで
少ないエアロダイナミクス形状のスポークを使用することにより、コリマ4バトンよりも軽量で、
空力的にも優位なホイールを多くのトライアスリートが使用している。
コリマ4バトンと比べると、慣性モーメントが少ない(リムが軽い)ので巡航には不利と思うのは、
空力と速度の加減速に影響する慣性モーメントととのバランスが解っていないから。
自転車のホイールの慣性モーメントに関して、確認しておく。
ホイールの慣性モーメントは、回転する構造体としてのホイールの質量の分布で変化する。
同じ質量であっても、ホイール外周部の質量が最も慣性モーメントに影響し、中心部となる
ハブに近づくにつれ、慣性モーメントの影響が低くなる。
特に27inという大口径のホイールにおいて、この質量の分布は中心部と外周部で想像以上の
影響をもたらす。
慣性モーメントは、巡航速度に達するまでの加速や登板に於いて、ライダーの
ペダリングエネルギーがバイクの速度エネルギーとなるのに直接影響する。
慣性モーメントの大きいホイールは、加速や登板に於いてライダーのエネルギーを多く奪う。
平地であれば、巡航速度まで加速してしまえば慣性モーメントの大きいホイールは、
力のため込み(フライホイール効果)が働くために、登板や(ほんの僅かでも)ブレーキングによる
速度の損失がなければ、巡航速度で走りやすいホイールと言えるが、実際にそのようなコースは、
稀である。巡高速で走るイメージで代表的だったハワイのアイアンマンコースでさえ
登板があるために、慣性モーメントの大きいホイールは、上位入賞者で使用している選手はいない。
慣性モーメントの大きいホイールで走った人がよく口にする言葉が「スムーズに走れる」であるとか、
「多少のアップダウンは、惰性で走れるから楽」という言葉。
本当に長い前置きになってしまった申し訳ない。ここからが都市伝説の始まりだ。
重いホイールがスムーズに走れるというのは、ライダーの円滑でないペダリングを
誤魔化す事ができるから。左右均等にクランクを回す事が出来なくても、重たいホイールは、
フライホイール効果で、ギクシャクしたペダリングをしても速度の変化が少ないので、
スムーズに走れているという錯覚なのだ。
ギクシャクしているということは、ムラのあるペダリング→非効率的なペダリングという事だ。
私は、トラックレースもやっていたので、トライアスロンやロードバイクのようなフリーギアしか知らない
ライダーのペダリングが、いかにお粗末なものかを実体験している。
トラックレーサーのギアは、フィクスドギア(固定ギア)のため、ペダリング=走りのスムーズさや
タイムにまともに直結するのである。
「アップダウンを惰性で走るから楽」も錯覚。速度変化は、確実に減速しているのだ。
フライホイール効果のために、登り初めでの速度の低下が少ないだけであって、元の巡航速度に
加速するためには、慣性モーメントの法則がまともに働くので、ライダーのエネルギーを奪う事になる。
慣性モーメントの高い(重い)ホイールに乗っているライダーは、軽量で高剛性なホイールで走った
経験がないのが殆どというより、全てなのが現状。
理由は、軽量高剛性のホイールは、コンプリートホイールで購入すると軽く¥10万するから。
また、ショップの手組みホイールもここで取り上げている ような、都市伝説のパターンが多い。
リアホイールのスポークパターンを長くして、ギクシャクしたペダリングをしなるホイールにすることで
未熟なペダリングスキルを感じさせない誤魔化しをやっているのだ。
慣性モーメントが強く(重たい)ペダリングパワーの伝達がダイレクトでないホイールは、
未熟なライダーのペダリングスキルをカバーするという目的であれば、解なのかもしれないが、
より高みを目指すトライアスリートにとっては、簡単に克服できる己の欠点に気づくことなく
アスリートとしてのレベルアップをスポイルすることになるようなホイールしか知らないのは、
とても不幸な事だと思う。
