
カーボンだから、ペダリングが脚に優しいとも言っている人がいる。
何をもってそんな世迷言を言っているのか。
カーボンの材料特性は、それはそれは多岐にわたる。
それは、カーボン繊維一本の強さに始まり、その糸で構成されたカーボンシートの特性。
そのカーボンシートをどのようなベクトルに対するストレスで何枚をどの部分に
どのように重ねるかで、カーボンと言う素材は、変幻自在に弾性、剛性を変化させる。
バイクのカーボンパーツでこの辺りの都市伝説で有名なのがカーボン製のフロントフォーク。
カーボン製のフロントフォークと聞いて路面からの衝撃吸収を想像するだろうが、
そうでないフォークも多く存在する。
私自身、頚椎に障害を持っているのでカーボン製のフロントフォークの付いたフレームは必要だった。
そして、世界初のフロントフォークまで全てフルカーボン(ステアリングコラムは鉄)の
TVT92HMに乗っていた。
購入後、すぐにチームカラーにウレタン塗装してもらった。
接着工法のカーボンフレームだったが、シルエットはクロモリフレームとほとんど変わらなかった。
試走した最初の感想は「なんじゃこの硬いフロントフォークは!」だった。
ペダリングは、リズム良くしなやかにハンガーがウイップする、カタログ雑誌の評判どおりだった。
私は自分の感覚を基本的には信用していないので、アイアンマンディスタンスをこなすトライアスリートに
組んだばかりのTVT92HMを貸して、100キロほど走ってきてもらった。
当然、フレームのスペックなど伝えていない。
帰ってきたトライアスリートが開口一番「このクロモリいいですねー!」
ちなみに、グレンマンガムが○○○○がカーボンフレームでバイクを組んでくれたと
はしゃいでいたので、そのフレームを見るとフィレット溶接が見て取れた。接着工法ではない。
指先でトップチューブ、シートチューブ、ダウンチューブと弾くと返って来た感触は、タンゲNo2だった。
タンゲNo2は、安価なフレームに用いられていた、クロモリパイプである。
グレンが信用しないので、磁石を貼り付けた。驚いていた。私はもっと驚いた。
宮古島のデビュートライアスロンで、延々と2時間近くバイクセクションのトップを独走しつづけた
間違えなくトップレベルのトライアスリートが、スチールフレームとカーボンフレームの違いすら
解らなかった事に驚いたのだ。
トライアスリートは、文字通り3種目をこなさなければならないので、バイクに携わる時間は
ロード選手と比較して物理的に少ない。
一方ロード選手は、一年中いかに効率良く楽をして速く自転車で走れるかを
日々考えて実践している。
また、SRM に代表されるような自転車における理論的な部分や、
人間の錯覚とか思い込みといったモノを機械データとして計測してする事が定常的に
行なわれているので、トライアスロンのような都市伝説 が通用しない。
餅は餅屋、バイクはバイク専門にという事だ。
